2020年3月15日(日)
「ザリガニの鳴くところ」を読了した。
この本はアメリカで記録的なベスト&ロングセラーになっており、
Amazonのカスタマーレビューでも異例なほどの高評価を得ている。
去年の春ごろからずっと、早く翻訳出ないかなあと待ち侘びていた作品だった。
実際読んでみると、期待してたほど素晴らしい作品ではなかった。
良い小説であることは確かだが、いくつかの点で物足りない。
まずミステリーとして弱すぎる。昨年読んだGLOBEの書評に、
「この作品には驚愕のラストが用意されている」と書いてあったが、
驚愕どころか単なる驚きすらない予想どおりの結末だった。
小説としては、登場人物の描き方が型通りすぎるのが弱点だ。
個性的なのは主人公のカイアだけで、他はみんな平凡な引き立て役。
まるでひと昔前のハリウッド映画のような単純な作りで、しらけた。
良かったのは自然描写。著者のディーリア・オーエンズは動物学者で、
ネイチャーライティングの分野では高く評価されている人らしいが、
その的確で詩情豊かな自然描写は本書の一番の魅力と言ってもいい。
また、思春期の性の目覚め、成人後の恋愛感情、他者との関わりなど、
主人公の内面や心理を描く文章はきめ細かく、リアリティがある。
幼い頃に家族が崩壊し、社会からも差別され疎外された孤独な女性が、
人間不信と愛への渇望の間で揺れながら成長するストーリーは現代的で分かりやすい。
いわゆるビルドゥングスロマンとしては傑作と言ってよいだろう。
要するに、良い小説ではあるが私の期待とは違っていたということ。
読んだことは後悔してないけど、買ったことは後悔している。残念。
ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。
人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。
6歳で家族に見捨てられたときから、
カイアはたったひとりで生きなければならなかった。
読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、
彼は大学進学のため彼女を置いて去ってゆく。
以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、
彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと
思いをはせて静かに暮らしていた。
しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく……
みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交錯するとき、
物語は予想を超える結末へ──。