後藤真希のいない5月10日

毎年5月10日がくると、後藤真希のことを思い出す。
特に今年は、彼女を思う気持ちが自分の中でひときわ強い。

今から10年前の2003年春、前年モーニング娘。を卒業した後藤真希は、
ソロ歌手として初めてのライブツアーを行った。「マッキングGOLD」と題した
このツアーの素晴らしさは、半ば伝説化している。友人森ちゃんの熱心な
勧めにも関わらず、私は一度も見に行かなかったが、後でDVDで見て、
モー娘。時代とは別人のようにかっこいい後藤真希のパフォーマンスに
衝撃を受けた。「これはもうアイドルというよりロックだな」と思った。

客も熱かった。ハロープロジェクト開始から15年、優に100本を越える
ツアーが開催されてきたが、盛り上がりの激しさ、いわゆる熱量の点では、
いまだにこの後藤真希ファーストツアーがNo.1ではないだろうか。

あれから10年。2013年のアイドルシーンに後藤真希はいない。
のみならず、「後藤真希的存在」と呼べるアイドルもいない。
つまり、グループアイドルに負けないぐらい熱いライブを展開できる、
傑出した魅力と実力を持つソロアイドルは1人もいなくなってしまった。

なぜ〈後藤真希〉はいなくなってしまったのだろうか?
説得力のある答えを提示できる能力は、残念ながら私にはない。
ただ、今のこの平成アイドルブームは、後藤真希的なスーパーアイドルの
不在を代償として成立しているのではないかという気はする。言い換えれば、
後藤真希(や松浦亜弥藤本美貴)レベルの優秀なソロアイドルがいない事実と、
大して可愛くもない普通レベルの女の子が多数アイドルとして通用している現状は、
たぶん裏腹というか、表裏一体の関係にあるんだろうと思う。

スーパーアイドルという言葉自体がほぼ死語化している事からも分かるように、
今日スーパーアイドルの需要はほとんどない。アイドルオタクが求めるのは、
自分をファンとして認めてケアしてくれる、それなりに可愛いアイドルだろうし、
にわかモノノフに代表される一般層が求めるのは、後ろの席や映画館でも
それなりに楽しめるライブをやってくれる、そこそこメディア露出や話題性があって、
そこそこ可愛いアイドルだろう。誰もスーパーアイドルなんて求めていないのだ。

もちろん、例外はあるだろう。かく言う私もその1人。
少女時代や能年玲奈に対する自分自身の反応を観察してみると、自分は
アイドルファンというよりスーパーアイドルのファンであることがよく分かる。
アイドルブームの渦中でそれなりに楽しみながら、内心どこか寂しさを感じるのは、
全盛期の後藤真希のようなスーパーアイドルに出会えていないからだろう。
この寂しさに耐え切れなくなったとき、たぶん私はアイドル界から離れると思う。
そのとき、傑出したロックシンガーとして復活した後藤真希に出会えれば最高だ。
おそらくそれは、所詮見ても叶わぬ「夢のまた夢」にすぎないだろうけど。


やっぱBメロはオーイングよりPPPHだよなぁ。て、そこかよ(笑)