私の履歴書にアラン・グリーンスパン氏登場

元日の楽しみの一つは、日経の私の履歴書を読むこと。
例年1月は大物が登場することが多いので期待していたところ、
今年は前FRB議長のアラン・グリーンスパン氏だった。
ひそかに任天堂山内溥前会長を期待していたのでちょっとがっかり。
山内溥私の履歴書を書けば面白くなることは必至だが、メディア嫌いの
山内氏が日経の依頼を断り続けているのだろう。私の履歴書に出ることを
夢見て頑張ってる社長や重役が多いなかで、氏の狷介さはカッコいい。
グリーンスパン氏は昨年11月に「波乱の時代」という本を日経から
出している。私も何度か立ち読みしたが、かなーり面白そうな本である。
おそらくその宣伝も兼ねての登場だろうが、やはり初回から面白かった。
NY育ちのインテリらしい抑制された、それでいてユーモアにも欠けていない
氏の味わい深い文章を少し引用しておこう。

エコノミストとして60年を過ごしてきたが、他の同業者と決定的に違うなと思うことがある。大半のエコノミストマクロ経済学を学び、そこからミクロに入る。その多くは国内総生産や総所得よりも下のところまでは降りてこない。私は全く逆だった。
若い時に採用された経済調査機関のコンファレンス・ボードには立派な図書室があった。私はそこにあった産業統計をむさぼるように読んだ。鉄鋼、繊維、自動車をはじめ主要な業種の資料がそろっていた。データを見たあとは実際を知りたくなった。例えば鉄鋼はどうやってつくられるのか。800ページに及ぶ技術書をすみずみまで読んだ。おかげで冷間圧延とは何かといったことも分かるようになった。繊維など主要な業種についても同じように一から勉強した。
こんな冗談をおもしろおかしく言う人がいるらしいが、真実を突いている。グリーンスパンが座り込んで真剣に本を読んでいる。何かと見れば19世紀のアメリカ中西部での小麦の耕作に関する書物だった。なんと退屈なことよと人は思うらしい。でも、私には何とも魅力的な作業なのだ。
経済統計やこまごまとした事象を分析するのが大好きで、人前に出るのはあまり得意でない市井のエコノミスト。それが、市場から一挙手一投足を監視されるFRB議長になり、20年近くも務めた。そんな変転のストーリーにつきあっていただきたい。