P.D.ジェイムズ『神学校の死』

今日は樋井明日香キャナァーリ倶楽部のイベントに行く予定だったが、
結局両方とも回避してしまった。面倒臭くなって回避したわけではなく、
昨日から読み始めたP.D.ジェイムズの『神学校の死』にハマってしまい、
読み終わってから行こうと思ってるうちに間に合わなくなったのだ。
P.D.ジェイムズは英国ミステリ界の女王と呼ばれている巨匠。
私は昔『女には向かない職業』という作品を読んで好きになり、
続けて3作ほど読んでどれも面白かったが、ハヤカワミステリ1500冊
記念作品ということで期待して読んだ『死の味』が意外につまらなかったため、
関心もそこまでになってしまっていた。それがたまたまこの連休中に
『わが職業は死』を読んだら面白かったので、続いて『神学校の死』も
読んでみたらさらに面白かったという次第。ただ、面白かったと言っても、
本格推理小説としての完成度は必ずしも高くはないと思われる。
けど、P.D.ジェイムズの場合は、とにかく文章がいいのと、あと、
ストーリーテリングが巧みなので、ツボにはまるとなかなか読みやめられない。
ダルグリッシュ警部をはじめ人物造形も実にうまく、そのうえ
風景や室内の情景などディテールもしっかりしているので、
全編これリアリティのかたまり、まさに匠の芸という感じである。
私は特にミステリー好きというわけではなく、実際、年に数冊しか読まないが、
P.D.ジェイムズの知的でエレガントな文体、そして深い人間洞察を感じさせる
物語は文句なしに好きである。PDも今年で87歳。あと何冊新作を読めるかは
分からないが、少しでも長く活躍し続けて欲しい。


『女には向かない職業』はペーパーバックでも読んだことがあり、
英文もそんなに難しくなかった記憶があったので、『神学校の死』も
英語で読んでみようと思い立ち、新宿の紀伊国屋書店(南店)へ行った。
P.D.ジェイムズのペーパーバックは7-8冊ほど並んでいたものの、
残念ながら『神学校の死』の原作は棚になかった。ちょっとガッカリでしたが、
代わりに4階でハヤカワ文庫版の『策謀と欲望』を買ってきた。
すでに読み始めており、これもなかなか面白そう。こうなると、
翻訳の出ているP.D.ジェイムズの作品はすべて読んでしまいたい気も
してくるが、飽きっぽさの巨匠とも言うべきもとすきだけに、
実行できるかどうかは微妙なところである。納得。