アイドルがロックフェスに出ることについて

最近アイドルがロックフェスに出演するケースが増えてきた。
基本的には、客を呼びたいフェス主催者と、ロックファンにアピールして
支持層を拡げたいアイドルの利害が一致して起きている現象と見られる。
なので、ロックファン/アイドルオタクの双方から批判が出るのは当然である。

そもそもアイドルブームとロックフェスブームは同根の現象と言える。
根本にあるのは、インターネットや携帯電話の普及によって生まれた、
「コミュニケーション重視」という世界的な流れ。この文明史的なトレンドに、
握手や会話という形でいち早く適応できたからこそアイドルはブームになった。

ロックの世界でこれに対応する現象がフェスブーム。ロック界にはジャンルという
壁があり、これが細分化してコミュニケーションの妨げになっている。
同じロックファンでも、パンク好きとメタル好きでは不倶戴天の敵同士。
そういう不毛な対立を超えて、普段聴かないバンドもいろいろ聴いて、
みんなで楽しもうよというのがフェスであり、そこには、コミュニケーションの
拡大という、音楽が本来持っていた社会的機能の復活が認められる。

そうしたバリアフリー化の波が、ロックの枠を超えてアイドルにも
及んできたのがここ数年の変化。そのきっかけはPerfumeだった。
2007年の段階でPerfumeを招んだサマーソニック運営には先を見る目があった。
当時Perfumeが「あんなのテクノじゃない」という理由でWIREへの出演を
断られていたことを思い出せば、サマソニの先見性はいっそう光る。
Perfumeの後は、ももクロが壁を超えることに成功し、今では、BiSや
でんぱ組のようにそこまで売れてないアイドルでも、それどころか、
くりかまきのような全く売れてないアイドルでも出られるようになった。
少なくともアイドルの側から見れば、大きな進歩と言っていいだろう。

アイドルがロックフェスに普通に出られる時代が続くかどうかは分からない。
けど、ジャンルにこだわらずに音楽を楽しむ人は今後も増える一方だろう。
iTunes RadioやSpotifyなどの定額聴き放題サービスが日本でもまもなく
普及する見通しで、これが聴き手のジャンルフリー化を促すのは間違いない。
それに対応してロックフェスのなんでもアリ傾向がさらに激化するのか、あるいは
逆に純化の方向で揺り戻しがくるのか、そのへんはまだなんとも言えない。
アイドルにもロックにもファッションの要素が多分にあるため、アイドルが
なんとなくおしゃれなものと見なされているうちは大丈夫だろうけど、
昔みたいにダサいものと見なされるようになれば、関係はすぐ終わるはず。
どっちに転んでもおかしくない状勢だが、カギを握るのはアイドルの側だろう。
具体的には、Perfumeももクロのような、ロックファンから見ても一応クールな
アイドルがもっと増えるかどうか。当面はそこが焦点になるのではないだろうか。


去年のRIJのPerfumeのステージ。回避して正解でした(笑)