江口愛実に関する雑感

結局は江口愛実も、秋元康が言う「80年代の逆襲」の1つなのだろう。
アイドル=メディアゲームという80年代的図式の中で、今どこまで遊べるか。
現実にはこの10年でアイドルはメディアゲームからコミュニケーションゲームに
変わった。これは社会全体の変化を反映した、おそらくは不可逆な変質である。
秋元氏も電通もそれは重々承知の上で、「でもメディアでも遊んでみたら?」と
軽く挑発しているように見える。テレビCM×雑誌×駅広告という80年代そのままの
メディアミックスにはソッポを向いた若者も、インタラクティブの要素を加えて
やればそれなりに食いついてくる。仕掛ける側はその辺も折り込み済みだろう。

面白いのは、推し面ランキングの結果だ。これは、ファンが合成して作った
バーチャルAKBメンバーの人気投票なのだが、思わず吹き出しちゃうくらい
強烈にかわいい木嶋里子ちゃんが断トツでTOPを走っている。
これは、江口愛実プロジェクトに込められたアイロニー、つまり、
「キミたちよくこんなブサイクなアイドルに熱くなれるね?」
という皮肉に対して、AKBファンが「ブサイク上等!」と開き直って
反撃している構図に見える。私自身の意識は江口愛実の側にあるけれど、
AKBファンのこういうシャレのめした反骨精神は結構好きである。
コミュニケーションゲームにおいて大事なのはルックスや才能じゃない。
大事なのは感情移入できるキャラクターとホスピタリティ(好対応)だ。
柏木由紀指原莉乃の躍進の原動力にもなった彼らのそんな価値観が、
自分の本音に近い業界人のアイロニーより好もしく思えるのは何故だろう。

ヴァーチャルアイドルということで言えば、初音ミク×AKB的な試みが、
早晩表面化してくるのではないだろうか。初音ミクのライブの様子を初めて
YouTubeで見たときは驚いたが、あれを見れば誰しも、グループアイドルへの
応用を考えるはず。あるいはもうとっくに用意は出来ているのかもしれない。

現場引退の時期が刻々と迫りつつある自分としては、在宅でも現場感を楽しめる
メディア環境が切実に欲しい。そういう環境もいずれ出来るから、期待して
もう少し待ってなさい。要約すれば、それが江口愛実cからのメッセージかな。