イノベーションとアイドル

今日の池田信夫blogでアップルのスティーブ・ジョブズに関する本が書評されている。
その中で、「どうやってイノベーションを生み出すのか?」という質問に対して、
ジョブズが次のように答えたことが紹介されている。

We consciously think about making great products. We don't think, "Let's be innovative!"
[...] Trying to systematize innovation is like somebody who's not cool trying to be cool.
It's painful to watch Michael Dell trying to dance.
私たちが意識して考えるのはすばらしい製品を作ること。 私たちは「革新的であろう!」とは考えない。
革新を体系化しようとするのはクールになろうとするクールでない人に似ている。
マイケル・デルが踊ろうとしているのを見るのはイタい。

当たり前のこともジョブズが言うとカッコよく聞こえるから不思議である。
これを読んで私は、日本のアイドル界におけるイノベーションについて考えた。
日本のイノベーティブなアイドルと言うと、まずはピンクレディーだろう。
あとは松田聖子松本伊代小泉今日子おニャン子クラブWink
安室奈美恵、SPEED、モーニング娘。Perfumeといったところだろうか。
あまり売れなかったアイドルでは、東京パフォーマンスドール、制服向上委員会、
BABY'S、CONA-milk、dream、Folder、BON-BON BLANCOが革新的だったと思う。
池田さんは、イノベーションを生むのは統計や分析ではなくcoolな才能だ、
と述べているが、アイドルの場合、最も強力なイノベーションは、プロデューサーと
パフォーマーの両方がcoolな才能の持主である場合に実現するように思われる。
その意味で、日本アイドル史上最高のイノベーション安室奈美恵であろう。
考えさせられるのは、スーパーアイドルとしての安室奈美恵を生み出したのが、
Let's make great productではなくLet's be innovative的思考だったことだ。
もし小室哲哉MAX松浦にgreat productという観念があったら、あんな
粗製濫造はできなかっただろう。音が斬新であれば曲の質は多少低くても構わない。
その割り切りが、おそらくは当時の若者の音楽的感性の低質さと共鳴して、
あれほど大きなブームをもたらしたのではなかっただろうか。それはiPodブームの
背景に若者たちの音質へのこだわりの薄さがあることと似た事態とも言える。
一方、最新のアイドルイノベーションであるPerfumeにおいては、great product志向と
innovative志向がほどよく両立されているように思える。残念ながらパフォーマーには
coolな才能というほどのものは無いように見えるが、そうは言っても、
Perfumeというプロジェクトをcoolに見せるだけの才能は確かにあるわけで、
実際はそれで十分なのである。しかし、私はそこで満足したくない。
いつかきっとまた安室奈美恵のような天才パフォーマー小室哲哉のような
天才プロデューサーのコラボレーションによって、あの頃の安室奈美恵を超える、
安室奈美恵よりもっと史上最高にinnovativeなスーパーアイドルに出会いたいと思う。
その夢が叶うまでは、私はヲタを引退できないのかも知れない。納得。