「天然コケッコー」を見て

昨日、TSUTAYAのレンタルDVDで「天然コケッコー」を見た。
評判にたがわず、とても良い映画だった。まず、映像が美しい。
山下敦弘監督をはじめ、脚本、撮影、音楽など、作品の随所に
若い映画的才能がキラキラと光っているのもうれしい。
しかし、なによりも素晴らしいのは、夏帆だ。
役柄の魅力と夏帆自身の魅力とがみごとに相乗して、
天才的と言いたくなるほどの、絶妙な存在感を放っている。
と言っても、演技が恐ろしくうまいというわけではない。
演じる技術だけで言えば、まあまあ上手いという程度だろう。
映画全体にただよう完璧主義的な雰囲気から推測すれば、
山下監督としては、もうワンランク上の演技力の持ち主、たとえば
谷村美月あたりを使いたかったのが本音だったかも知れない。
実際、谷村美月主演でもこれはいい映画になったはずだ。しかし、
彼女の優れた演技そのものが、この作品の世界観と微妙に齟齬を来す
ことになった事態も十分想像できる。そう考えると、ここはやはり、
この映画の主演が夏帆で良かったと思う。実際、夏帆の持つ透明感、
つんく風に言えばアクア感は、この映画の洗練された自然さや、
様式ぶらない様式美とほとんど完全に調和し、共鳴している。
夏帆自身も言うように、この映画は彼女にとってとても大切な映画に
なるだろう。ちょうど高岡早紀にとっての「バタアシ金魚」のように、
一生にただ一度しか撮れない記念碑的な作品になるだろう。
夏帆、おめでとう。
そしてこんな素敵な映画を届けてくれて、ありがとう。
今後は決して「かわいくない方の夏帆」とは呼びません。納得。