私の楽曲履歴書(20)

中学生時代の私は、目立たないごく普通の子どもだった。
勉強は試験前しかせず、部活は適当。最大の楽しみは、休み時間に
友達とやるトランプ(大貧民)という、至って平凡な中学生だった。

そんな平凡な私も中学生活に慣れると、意識的に洋楽を聴くようになった。
まず出会ったのはパンクロック、つまりセックス・ピストルズである。
当時のピストルズは、その反体制的な言動で危険物扱いされていたが、
音楽の印象は結構普通なポップロックだったように記憶している。
チバユウスケは、初めてピストルズの曲を聴いた時の印象を、
「なんかヘヴィメタルみたいだなと思った」とどこかで語ってたと思うが、
私も似たような印象で、最初から特に抵抗なくすんなり入っていけた。

友達にカセットにダビングしてもらって聴いた「勝手にしやがれ!!」の中では、
「Holidays in the Sun」と「Pretty Vacant」が特に好きだった。ピストルズ
レパートリー全体の中で一番好きな曲は「The Great Rock'n'roll Swindle」。
彼らの魅力であるハチャメチャさがよく出ていて、今でも愛聴している。

シド・ヴィシャスには私はほとんど注目していなかった。彼がああいう形で
早逝したことがピストルズの神話化に影響していることは間違いないが、
その後いろいろ読んだり見たりして、ピストルズの魂はシド・ヴィシャス
だったんだなと正しく理解した頃には、私もすっかりおじさんになっていた。
今では保守化も進行し、シドに拳銃で撃ち殺される側の人間になってしまった。
面白いのは、趣味が保守化するに連れていっそうピストルズの曲が好きになって
きたこと。中学の頃はまさか50近くまでパンクを聴くとは思わなかったのになあ。