「大統領オバマは、こうしてつくられた」

大統領オバマは、こうしてつくられた

大統領オバマは、こうしてつくられた

晴耕雨読ならぬ晴アイドル雨読ということで、今日は地味に読書。
1週間ほど前に読み始めた「大統領オバマは、こうしてつくられた」を
読み終えた。これは2008年のアメリカ大統領選挙のルポで、
アメリカで大ベストセラーになった本。評判に違わぬ面白さだった。
バラク・オバマヒラリー・クリントンジョン・マケインの3人の、
選挙中の言動が驚くほどリアルに、かつ詳細に再現され、そこから
各候補者の意外な一面が見えてくる。とくにオバマの自信家ぶりや、
政治的駆け引きにおけるスマートなしたたかさは印象的だった。
この本の一番感動的な部分は、たぶん誰が読んでも同じで、
大統領選挙に勝ったオバマがヒラリーに国務長官就任を要請し、
ヒラリーが迷った末にそれを受け入れる場面だろう。私もそこは
ジーンと来たが、もう一つ心に沁みる場面があった。それは、
マケインが、古くからの友人であるコリン・パウエル
オバマ支持を表明したことを知って衝撃を受けるくだりだ。

パウエルに見放されことは、マケインにとって痛烈な打撃だった。
長いつきあいがある以上に、パウエルはマケインと同じ共和党
ブランドを代表しているのだ。国防においては強硬。財政には慎重。
実用主義であり、教条主義ではない。マケインは、今の自分が
体現しているもののせいでパウエルのような人物が離れていくとしたら、
自分はどうなってしまったのだろうと考えざるを得なかった。

マケインはパウエル同様、軍人出身の筋金入りの保守主義者で、
そのことを誇りに思っている。しかし、オバマへの劣勢を跳ね返して
一発逆転を狙うため、副大統領候補にアホなサラ・ペイリンを選んだことで、
穏健な保守派の支持を失う結果になった。それは第一義的には選挙戦略の
失敗なのだが、そのことを真剣に受け止め、自分自身の問題と捉えて
深く悩むマケインの人としての誠実さが、私には尊く、羨ましく思えた。

若い頃は別段そういうことはなかったのに、年をとるごとに、
人としての誠実さというものの価値が重く思えてくる。
人間誰しもそういうものなのだろうか。それとも、私自身が
あまりにも不誠実なせいでそう思えるだけなのだろうか。
なんとなく後者が正解っぽいけど、あまり深く考えるのはよそう。