ニーチェの十誡

今日はフリードリッヒ・ニーチェの誕生日らしい。(襞緒さんのTwitterで知った)
生誕166周年、没後110年と言えば、ずいぶん昔の人のようだけど、
まだまだニーチェの思想はアクチュアルである。今年は日本で
超訳 ニーチェの言葉」が売れたので、更に読者が増えたはず。
あの本自体は、ニーチェ思想のダイジェストとしてはあまりにも
ヌルすぎるというか、悪い意味で一般的すぎるとは思うけど、
何はともあれ、人々がニーチェに触れる機会が増えたのは喜ばしい。
私の知ってる限り、ニーチェぐらい現代人にとってリアルで、
読みやすく(決して分かりやすくはないが)、普通の人にとっても
インテリにとっても芸術家にとっても役に立つ哲学者はいない。
私も学生時代から折にふれてはニーチェの著作を読んで、その度に
目からウロコが落ちたり、自分の価値観をハゲしく揺さぶられたりしてきた。
たまたま少し前に読んだ本の中にも、非常に印象的な一節があった。
今日はそれを引用しておこう。タイトルは「自由精神の十誡」。

汝、諸国の民を愛することも憎むこともなかれ。
汝、政治にたずさわることなかれ。
汝、富むことなかれ、また乞食ともなることなかれ。
汝、名声あり権勢ある者たちを避けるべし。
汝、汝の妻を自国の民とは別の民からめとるべし。
汝、汝の子らを汝の友たちによって教育させるべし。
汝、教会のいかなる儀式にもしたがうことなかれ。
汝、悪事を悔いることなく、その悪事のためにいっそう善行を積むべし。
汝、真実を語りえんがために、流浪をよしとして選びとるべし。
汝、世界が汝に対抗し、汝が世界に対抗するがままに任せるべし。

出典:「生成の無垢(上)」(ちくま学芸文庫)P.549--550