山口百恵という超えられない壁

今年は山口百恵引退30周年の年。30年前の今日、日本武道館
ファイナルコンサートが行われた。百恵ちゃんが引退したのは、
自分が高1の頃。当時の思い出はほとんど何もない。すでに松田聖子
時代が始まっており、山口百恵はもはや過去の人という感じだった。
周知の通り、引退後は一切メディアに姿を現さない百恵さん。
それでも今日に到るまで名声が保たれているのは、彼女が晩年に示した
歌手としての実力が、忘れられるには余りに卓越していたからだろう。
実際、それは驚くべき水準の歌唱力である。私は「としごろ」から
「一恵」まで百恵さんのシングル曲は全部好きだけど、特に好きなのは
晩年の歌唱だ。単に歌唱力だけなら、或いは(同い年の)岩崎宏美の方が上
かもしれない。だが百恵さんの歌には岩崎宏美には無い「凄み」があった。
この凄み、言い換えれば、強烈なリアリティを持つ情念のほとばしりが、
山口百恵を今日まで唯一無二の存在にし続けている決め手だと私は思う。
第二の山口百恵を育てたいと思った音楽関係者は大勢いたはずだが、
30年間そういう歌手は現われなかった。おそらく「平成の山口百恵」も
もう現われないだろう。それはそれでいい。平成の世にはCoccoもいれば
椎名林檎もいる。他にも私の知らない凄い女性シンガーが何人もいるはず。
それでも、もう一度山口百恵のような歌手に出会いたいという思いは残る。
その未練の正体はおそらく、残念ながら私の目の黒い内には二度とやって
来そうにない「歌謡曲の黄金時代」に対する、捨て切れない郷愁なのだろう。

あまりにも素晴らしいのでもう1曲(いわゆるアンコール)