グリーンスパン「波乱の時代」

グリーンスパンFRB議長の自伝「波乱の時代(上)」を読んだ。
内容の面白さも文章の良さも期待以上だった。グリーンスパンが若い頃、
プロのジャズミュージシャンだったことはよく知られているが、プロに
なる前にスタン・ゲッツと一緒にサックスを学んでいたことは初めて知った。
当時からスタン・ゲッツの才能は傑出していたそうだが、彼の演奏を
聴いているだけで自分も演奏がうまくなったとグリーンスパンは語っている。
以前に読んだボブ・ウッドワードによる伝記では、FRBの議長としての
彼の手腕、議事運営の巧みさや経済統計分析の鋭さ、とくに90年代後半の
生産性の飛躍的な伸びの発見とその原因の分析などが詳しく書かれていて
面白かったが、この自伝ではそのへんはさらっと流されている。代わりに、
自分が仕えた歴代大統領への言及が面白い。ずば抜けて優秀だったのは、
ニクソンクリントンだそうだ。レーガンは経済政策をじっくり考える
だけの頭がなかったと指摘している。また現ブッシュ大統領の放漫財政にも
保守主義者(財政均衡論者)の立場からはっきり批判を加えている。
閣僚の中では、ロバート・ルービンに格別の親近感を抱いていたようだ。
ルービンの回顧録でもグリーンスパンは特別視されていたから、たぶん
相思相愛の関係なのだろう。ルービンは民主党グリーンスパン共和党だが、
ともにニューヨーカーで非キリスト教徒、そして自伝の語り口もよく似ている。
ビリー・ジョエルに「New York State of Mind」という有名な曲があるけど、
この2人は言わば「New York style of mind」を体現している感じがする。
こういう魅力的なアメリカ人の自伝は英語で読みたいところだが、たぶん
買っても読み通せないと思うので、時々立ち読みするぐらいで我慢しよう。納得。